子どもが不登校や引きこもりの状態にある時、親がやりがちなことがあります。もちろん子どもの将来を案じて、子どものためを思ってやるのですが、結果的には回復までの道を逆走してしまうことも。
何度も言っているように、一番大切なのは「安心安全な環境」を作り、その中で子どもが「自分は自分で良い」と思える感覚を育てること。これが目的なのに、親が安心安全を脅かすことをするわけです。ちょっと考えてみれば分かるのに、「このままではいけない!」と焦る気持ちがつい余計なことをしたり言ったりしてしまうんですね。
ここでは、私ももれなくやってしまった3つの例を挙げてみます。
自分の恥を晒すようですが、何かの参考になれば幸いです!
正論で責める
これが私の一番良くやってしまった失敗です…(泣)
「勉強をしたくないのなら、学校をやめて働けばいいんじゃないの?」
「みんな誰だって、少しくらい苦しいことを我慢してやっているんだよ」
「あなたの将来が不安だよ。外出したくないなら家でできる仕事でも探したらどうなの?」
「親も歳をとっていくんだから、今後どうするのかを自分でよく考えてね」
言い方は気を遣って優しく言うようにしていましたが、内容はこんな感じでした。
どれも世間では当たり前のことですよね?
ただ、今振り返って分かることは、不登校や引きこもりになる子どもたちは、親が言いたいこと、世間での当たり前に思われていることは既に分かっているということです。むしろ、年齢に対して分かりすぎるほど。彼らは人一倍「こうあらねば」という強い思い込みがあるのが特徴なんです。
自分はそれが分かっていながら何もできていない。
これからもできそうにない。
親の期待にも応えることができない。
当たり前のことなのにできない。
分かっているのに、みんなができていることなのに、そんなことすらできない情けない自分。
この現実が、何よりも苦しいのです。
我が家では親が正論を語り始めると、子どもはすぐに自分の部屋にこもり、ゲームに熱中していました。その様子を見て「またゲームに逃げて、本当に分かっているんだか…」と思っていました。分かっているのかうるさいと思っているのか、どちらにしてもゲームに夢中になっている様子には本当に腹が立ちました。
でも私が腹を立てていたのは何に対してだったのか?
親がこんなに心配し、こんなに考えて言ってるのに、頑張ろうともしないこと?
正しいことを言っているのに、そこから逃げていること?
今になって分かるのは、本人が痛いほど分かっていることを吊し上げるかのように正論で責めたことが、どんなに意味がないことだったかということです。
頑張りたくてもできなくて、痛いほど分かっていることを何度も言われる。本人は心が壊れそうでどうしようもなくなって、気持ちの平静さを保つためにやむを得ずゲームの世界に逃げ込んでいたのに、そこまで追い詰めたのは親であるのに、親の言っていることが分かってもらえないと腹を立てているという…。
近くで聞いていた兄弟には、「お母さんの話は正論すぎて何も言えなくなる。聞いているこっちまで苦しい」とまで言われる始末でした。
本人の目線に立って考えればすぐにわかることです。
「正論で責める」ことは、まさに「百害あって一利なし」です。
駆け引きをする
親が一生懸命相談に行ったり、子どもの言うことを聞いてやっても一向に動く気配もない状態が続くと「少しは刺激を与えなくては」と思い始めます。私が言ってしまったのは、
「ゲームがやりたいなら、本来は学校に行くべき時間の朝8時までだけ。」(小学生の頃)
「働かざるもの食うべからず。中学生までは食事を作るけれど、何もしないならそれ以降は自分でなんとかする」
「18歳までは面倒を見るが、それ以降は家を出て自立する」
などなど。
その結果どうなったかというと、昼夜逆転、部屋への閉じこもり、食事の量が減る、会話は激減…でした。
これも何一つとして良い結果は出ません。断言できます。
こんなことで回復する訳がないのです。安心でもなければ、「自分は自分で良い」という気持ちももてないまま、期限を区切って焦らせる。こんな状況を作って、何をさせたかったのでしょうか?
中には、望まないながらも本人が動き始めようとする場合もあります。
でも、この「脅しのような駆け引き」で、完全脱出に至ることはありません。安心・安全が根底にない頑張りは、いつか必ずぶり返しが出てきます。
声をかけず、静かに見守る
状況がひどい場合は、親との接触を避けたがります。そうなると親はどんなふうにきっかけを作って、どんな声かけをしたらいいのかが分からなくなってきます。下手に話しかけると、もっと状況を悪くしてしまうかもしれない…。そこで考えるのが、「ひとまずそっとしておこう」ということです。
気持ちは分かるのですが、全く話しかけないという状況だけは避けてくださいね。
ただでさえ敏感な子たちなので、聞いていないようで家族の声はちゃんと聴いています。だから、家族の中で交わされる会話をただ普通にすれば良いのです。
「おはよう」「おやすみ」「行ってくるね」「ただいま」「雨が降ってきたね」「いい天気だね」
などなど。
無視されようと怒っていようと、構わずこちらから声かけをすることに意味があります。
だってその言葉さえないとしたら…。
子どもはますます居場所をなくし、自分がいてもいなくてもいい存在だという思いがどんどん大きくなっていくのではないでしょうか。
状態が悪い時こそ、「あなたは家族で、大切な存在なんだ」という気持ちを常に伝え続ける意味でも、ぜひ普通通りに声かけを続けてください。
まとめ
以上、やってはいけないことを書いてきました。親も人間ですから、腹が立つこともあれば我慢ができない時もありますよね。ただ、上記の3点だけはやらないように気を付けてほしいと思います。この3つは「自分という存在は、親に迷惑をかけるだけの愛される資格がない存在だ」と思わせることだからです。
わが子を、【条件付きではない全肯定の愛】で包む。
これで、不登校・引きこもりからの完全脱出は叶います!