不登校・引きこもりになる子どもたちは、話を聞いて応援の気持ちを伝えると、多くの場合「~してみる」「がんばる」と表情が明るくなります。素直で人の気持ちがわかる彼らは、打ち解けて話すうちに意欲を見せ、実際に動き出そうと一生懸命に努力するんですね。
でも残念ながら、やがて風船がしぼむように意欲がなくなり、元の状態に戻ってしまう。もう大丈夫と思っていたのに、しばらくすると(中には数年も経ってから)ある出来事がきっかけでまたぶり返す。がっかりした様子を見せてはいけないと分かっていても、親としては本当に残念で、私も何度も「またか…。」と落胆してしまいました…。
せっかく本人ががんばっているのに、なぜぶり返してしまうのか?
「want to」を待つ
不登校・引きこもりになる子どもたちのほとんどは、真面目で繊細な性格の持ち主。だからこそ、親や周りの人たちに応援されると、期待に応えようとしてがんばります。「これではいけない」と言う気持ちは本人が一番強く感じているので、常識として今するべきと考えられることをやろうとします。しかしそれは、本人の心からやりたいことではないんです。
「want to」ではなく「have to」でがんばってしまう
「want to」は「心やらやりたいこと」なので、エネルギーがどんどんわき出てきます。一方で「have to」は「やらなくてはいけないこと」なので、エネルギーをじわじわと消費していきます。真面目で繊細な彼らは、「これくらいはできなくては」という思いでこの状態を続け、ついにはガス欠状態に…。
こうして不登校・ひきこもりはぶり返していきます。
完全に脱出させる過程では、親や応援者への過剰な気遣いをさせない。子どもたちがエネルギーをためていくことが大切なので、
本人への働きかけをやめ、安心・安全な環境を親が整える
心から湧き上がってくる「want to~」を待つ
やはりこれにつきます。途方もなく時間がかかるようにも思えますが、結局は、これが回復までの一番の近道です。
強い思い込みのリセットは時間がかかる
不登校・引きこもりの子どもたちは、真面目だと言うことをお話ししました。真面目な彼らは一般的な道徳的な考えを非常に強く意識して、「こうあらねばならない」と思い込みすぎる傾向があります。強い思い込みとしては、次のようなものがあります。
- 人に迷惑を掛けてはならない
- 人に嫌われてはならない
- 親の期待に応えなくてはならない
- 皆と同じようにできなくてはならない
- 完璧にできなくてはならない
- 失敗してはならない
などなど…。
これらの思いは多少なりとも誰もが感じていることかもしれません。しかし彼らは頑なまでにこれを信じ、自分自身をがんじがらめになるほどそれに当てはめようとする傾向があります。それを日常生活に支障がないレベルにしていくには、どうしても時間がかかるということを覚悟しなくてはなりません。彼らが自分を縛り付けている強い思い込みから解放され、
- 自分が思うほど、人は迷惑だと思っていない
- 全員に好かれようなんて無理
- 親の期待は知っているが、まずは自分の思いを大切にする
- 誰にも苦手なことはある
- 初めから完璧にできるなんてあり得ない
- 失敗から学ぶこともある
こんな思いに近づいていけるようになるまで、油断せずに同じスタンスで安心・安全な環境作りを続けていってほしいと思います。
基礎の部分をしっかりと作り上げていけば、上にいくら積み上げても決して崩れることはありません。
ゴールを見誤らない
順調に回復のステップを踏んでいても、周りから見るとその状態は、「3歩進んで2歩下がる」くらいの感覚です。焦りも出てきますし、何よりも回復のゴールが「学校に行き始めること」や「働き始めること」だと思い込んで、それが始まると「やった~!」とばかりに油断してしまいます。これまでせっかく安心・安全な環境を作ってきたのに、子どもたちが動き始めると、つい「もう少しがんばれ」という雰囲気で、暗にプレッシャーをかけ始めてしまいます。
実はここまで来ていたら、むしろ一度立ち止まって、本当の自分の気持ちを確かめようとするのが自然な流れだと私は思っています。
「学校に行き始めること」や「働き始めること」がゴールではない。
「これがやりたい」「これはやりたくない」と自分で判断し、「自分は自分で良い」と心から思えること、「自分は価値のある存在だ」と感じ、「やってみよう!」と夢に向かって進もうとすること。ここが本当のゴールではないかと思います。それまでは、子どもたちの一見ネガティブに見える行為もサラリと受け入れることも必要になってきます。
弱音も愚痴も退行もあり。どれも上手くいっている(自分の気持ちを出せている)証拠です。
この時期こそ親がブレることなく「全肯定の愛」を注ぎ続けていくことを忘れてはいけないと思うのです。
まとめ
いつまで親は努力を続けていくのか…。とてつもなく長く険しい道のりに思えることがあります。
わたしの経験から言えることとして、上述した不登校・引きこもりの子どもたちがもつ強い思い込み、これは親も必ずもっています。それが子どもたちに影響しているので、当然といえば当然ですが。
私も人より「こうあらねばならない」という強い思い込みや常識に縛られるところがあって、それを外していくためにかなり努力しました。正直なところ、未だに残っているなと感じることもあります。でも、それを外せたかどうかということよりも、「まだできていないな。」と自分で意識したり、「少し外れてきたぞ!」と喜んだりすることの方が大きいと思うのです。
不登校・引きこもりで苦しむ子どもたちの回復のためにしていることは、実は、親自身が自分を解放していくことでもあるんですね。自分も大切なわが子も勝手な思い込みから解放され、より生きやすい人生にシフトしていくことができたら、それは2倍、3倍の喜びになりますよね!
「この子のおかげで、親こそが自分の人生を生きることができるようになった!」
こんなふうに思える日がきますよ!^^